
親族が亡くなった後、通帳や保険証書と並んで見つかることがある「遺言書」。
突然手にしても、「勝手に開けていいのか?」「どんな手続きが必要なのか?」と戸惑う方は少なくありません。
遺言書は形式によって手続きが異なるほか、相続人間の連絡や分配の進め方にも注意が必要です。
この記事では、半田市をはじめとする知多半島エリアにお住まいの方に向けて、遺言書の種類別の対応方法や相続の進め方、家族間のトラブルを防ぐポイントを解説します。
ご自身の状況に置き換えながら、必要な対応を整理する際にお役立てください。
故人の遺言書を見つけたらすべきこと

遺言書を見つけたとき、慌てて中身を確認したくなるかもしれませんが、まず確認すべきなのは「どの形式で作成されたものか」という点です。
遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、それぞれ手続きや取り扱いが異なります。
形式によっては、すぐに相続手続きに進めないケースもあるため注意が必要です。
ここでは、遺言書の種類ごとの特徴と注意点を解説します。
h3:自筆証書遺言の場合は「検認」が必要
自筆証書遺言とは、遺言者が全文・日付・氏名を自筆で書き、押印して作成する遺言書のことです。
民法で定められた要件を満たしていない遺言書は、原則として無効と判断されます。
この自筆証書遺言を相続手続きに使うには、家庭裁判所で「検認」の手続きを行うことが必要です。
申立先は、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります。
思わず中を確認したくなっても、封がされた遺言書は開封せず、そのまま家庭裁判所へ提出するのが原則です。
もし開封してしまった場合には、民法第1005条により5万円以下の過料が科される可能性があります。
検認が完了すると、「検認済証明書」が発行され、これによって不動産の名義変更や預貯金の解約といった相続手続きが進められるようになります。
なお、秘密証書遺言も自筆証書遺言と同様に、家庭裁判所での「検認」が必要です。
秘密証書遺言は、遺言者が自ら作成した遺言書を封筒に入れて封をし、公証人および証人2人の立ち会いのもと「これは遺言書である」と申し出て作成する方式です。
内容を誰にも見せずに作成できる一方で、形式面が複雑なため、実務上はあまり利用されていません。
公正証書遺言はすぐに相続手続きへ

公正証書遺言とは、遺言の内容を公証人に伝え、その場で正式な文書として作成してもらう形式です。
遺言を作成する際には、立ち会い人が2人必要で、専門の役所(公証役場)に保管される仕組みになっているため、内容の正確さや安全性が高く、信頼できる遺言とされています。
公的な手続きにより作成されるため、家庭裁判所での「検認」という手続きは不要です。
公正証書遺言の正本や謄本をもとに、すぐに預貯金の解約や不動産の名義変更などの相続手続きへ進めます。
知多半島内では、半田市に「半田公証役場」があり、公正証書遺言の作成や保管に対応しています。
遺言書の存在をほかの相続人に伝える

遺言書を見つけたら、その存在をできるだけ早く他の相続人にも知らせることが大切です。
ただし、遺言書の種類によって伝えるタイミングに注意しましょう。
- 公正証書遺言の場合
検認は不要なため、見つけた時点で正本や謄本の写しをもとに内容を伝えて問題ありません。
- 自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合
検認を終えるまでは、内容を共有しないのが原則です。
遺言執行者が明記されていれば、その人が中心となって相続人に連絡を行うのが一般的です。
また、全文を開示する前に「遺言書が見つかった」という事実だけを先に伝えるなど、状況に応じて段階的に共有していくことも考えられます。
遺言書の存在を意図的に隠す行為は、場合によっては民法第891条5号の相続欠格事由に該当するおそれがあります。
相続人間の信頼関係を損なわないよう、適切なタイミングで伝えましょう。
遺言書の内容は絶対?家族として納得できないとき

遺言書は、法的な要件を満たしていれば原則として有効とされます。
たとえ相続人のうち一部の人に多くの財産を遺す内容であっても、「不公平だから無効」とは基本的になりません。
ただし、相続人には最低限の取り分を保障する「遺留分(いりゅうぶん)」という制度があります。
遺留分を侵害された場合、遺産を受け取った人に対して「遺留分侵害額請求」を行えば、自分の取り分の一部を取り戻せます。
「なぜ自分だけ相続されていないのか?」「内容に納得できない」といった違和感があるときは、まずは遺言の有効性や自分の権利を確認するようにしましょう。
ご自身だけで判断せず、早めに弁護士に相談することで、法的に適切な対応や解決策を見つけやすくなります。
詳しくは「【半田市の相続相談】遺言書に納得できない方へ|遺言が無効になるケースと手続き方法」をご覧ください。
遺言書がある場合の具体的な相続手続き
遺言書が見つかり、内容の確認や検認などの初期対応を終えたら、実際の相続手続きに進みましょう。
遺言書に従って相続を進める場合でも、相続人の確認や財産の把握、名義変更、税務の対応など、やるべきことは多岐にわたります。
ここからは、相続を円滑に進めるための主な手続きを4つのステップに分けて解説します。
戸籍による相続人の確認
まずは、法定相続人が誰なのかを正確に把握することが重要です。
遺言書に「長男にすべてを相続させる」と記載されていたとしても、他に相続人がいないとは限りません。
正式な手続きを円滑に進めるためには、原則として相続人全員を確認しておく必要があります。
具体的には、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せて、相続人を調査します。
遺言執行者が指定されていれば、その人が手続きを担うのが一般的です。
故人の本籍地が転々としている場合には、複数の市区町村に戸籍の請求をしなければならないケースもあります。
確認が不十分なまま進めてしまうと、後から相続人が判明してトラブルになるおそれがあるため、慎重に進めましょう。
財産目録の作成
次に行うのが、被相続人の財産全体を把握する「財産目録」の作成です。
これは、どのような財産が遺されていて、それが遺言書の中でどのように指示されているのかを確認するために必要です。
財産には、預貯金・不動産・株式・投資信託・自動車・生命保険の死亡保険金などが含まれます。
借金などの負債がある場合も、あわせて把握しておきましょう。
財産目録は法律上必須ではありませんが、手続きを円滑に進めるうえで非常に有効です。
預金・不動産の名義変更

遺言書に基づいて財産を相続する際は、名義変更などの実務的な手続きが必要です。
遺言書の中で遺言執行者が指定されていれば、その人物が中心となって手続きを進めます。
遺言執行者には遺言の内容を実現する責任があり、相続人はその執行に協力しなければなりません。
遺言執行者の指定がなければ、相続人の中から選ぶか、家庭裁判所に申し立てて選任してもらいましょう。
遺言執行者が決まったら、具体的な手続きに移ります。
預金を解約する際には、各金融機関の指定書類に加え、遺言書の原本または謄本が必要です。
自筆遺言の場合は、一般的に検認済証明書の提出も求められます。
また、不動産を相続したときは、法務局での相続登記(名義変更)を行いましょう。
2024年4月1日から、不動産を相続した相続人には、相続登記の申請が義務付けられています。
具体的には、次のいずれかの時点から3年以内に申請しなければなりません。
- 遺言や法定相続によって不動産を取得した場合:取得を知った日から3年以内
- 遺産分割によって取得した場合:遺産分割が成立した日から3年以内
申請を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性もあるため、注意してください。
相続税の申告・納付
遺産の総額によっては、相続税の申告と納付も必要になります。
相続税がかかるかどうかは、「基礎控除額」を超えているかどうかで判断されます。
基礎控除の計算式は次のとおりです。
3,000万円 +(法定相続人の数 × 600万円)
たとえば、相続人が配偶者と子ども2人の計3人とすると、基礎控除額は4,800万円です。
遺産の総額がこれを超える場合、申告が必要になります。
相続税の対象には、預貯金や不動産のほか、有価証券や生命保険金なども含まれます。
申告は相続人がそれぞれ行うのが原則で、期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
期限を過ぎると延滞税などのペナルティが発生します。
少しでも気になることがあれば、早めに専門家に相談し、必要に応じて弁護士のサポートも検討しましょう。
遺言書に関して弁護士に相談すべきケース

遺言書が見つかったあと、内容や手続きを自分なりに調べて進めてみたものの、「これで本当に大丈夫だろうか?」と不安を感じてしまうことがありますよね。
- 遺言の内容に納得がいかない
- 相続人同士で意見が食い違っている
- 手続きの進め方が分からない
半田市をはじめとした知多半島エリアでも、こうした状況に直面し、対応に迷うご家族が多くいらっしゃいます。
無理に自分たちだけで解決しようとせず、専門家の力を借りるという選択肢も検討してみてください。
以下では、弁護士に相談をおすすめする代表的なケースをご紹介します。
遺言書の内容に納得できないとき
遺言書を読んだときに、「本当に本人が書いたのだろうか?」「極端に一部の人に有利すぎないか?」と違和感を抱くケースが時々見受けられます。
たとえば、筆跡が不自然だったり、相続人の一部にだけ財産が集中していたりする場合には、遺言の有効性や遺留分の侵害が疑われる可能性もあります。
このような判断は、相続人自身で行うのが難しい場面も多いため、早い段階で弁護士に相談し、内容の妥当性や自身の権利を確認しておくのがおすすめです。
相続人間でもめそうなとき
遺言書の内容がきっかけとなり、「不公平だ」「納得できない」といった声が上がると、相続人同士の関係が一気に悪化することがあります。
感情的な対立に発展してしまうと、手続きが進まないばかりか、家族の関係が修復困難になるケースも少なくありません。
遺産の分け方や手続きの進め方に不満がある相続人がいる場合は、中立的な立場で助言してくれる弁護士に早めに相談すると、円満な解決につながりやすくなります。
h3 誰が手続きの主導をとるかでもめているとき
遺言書に「遺言執行者」が明記されていないと、代表者をめぐって意見が対立する、話し合いが平行線をたどるといった事態が起こりがちです。
代表者が決まらないと「なぜあなたがやるの?」といった不信感が生まれ、相続手続き自体が滞る原因になります。
こうした状況では、中立的な専門家である弁護士が調整役となることで、話し合いがスムーズに進みやすくなります。
「そもそも手続きが難しすぎる」と感じるとき
相続手続きには、以下のような専門的な対応が必要です。
- 戸籍の収集
- 財産目録の作成
- 名義変更(預貯金・不動産など)
- 相続税の申告・納付
遺言書がある場合でも、どこまで遺言の通りに進めればいいのか、誰が何をするべきなのかが分からず、戸惑う方がほとんどです。
「何から始めればいいかわからない」「忙しくて手が回らない」というときは、弁護士に一度相談し、流れを整理するだけでも安心感が得られます。
遺言書に関するよくある疑問と対処法
遺言書があるからといって、すべてがスムーズに進むとは限りません。
内容や状況によっては判断が難しい場面もあり、自己判断で進めてしまうと、後々のトラブルや相続人間の対立につながる可能性もあります。
この章では、遺言書に関するよくある疑問とその対処法をQ&A形式で解説します。
Q:遺言書に記載のない財産があった場合、どうやって分ける?

A.遺言書にすべての財産が記載されているとは限らず、手続きの途中で「記載漏れ」の財産が見つかるケースもあります。
たとえば、使われていない預金口座や評価額の低い土地、古い有価証券などが挙げられます。
このようなときは、相続人全員で話し合い「遺産分割協議」によって分け方を決めるのが基本です。
協議内容は書面(遺産分割協議書)として残す必要があります。
また、遺言書に「遺言に記載のない財産はすべて◯◯に相続させる」といった包括的な文言が含まれていれば、その内容に基づいて手続きを進められる可能性もあります。
ただし、遺言書の表現が曖昧だったり、記載されていない財産について相続人間で意見が分かれたりする場合は、自己判断せず、専門家の助言を受けるようにしましょう。
話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所での調停によって解決を図る方法もあります。
財産の有無や性質にかかわらず、相続人全員にとってできるだけ公平に、かつ納得できる形で進めることが相続をスムーズに進めるポイントです。
Q:2通の遺言書が見つかったら、どちらが有効?
A.複数の遺言書が見つかった場合、原則として日付が新しい方の遺言書が有効とされます。
これは民法の規定により、内容が異なる遺言が複数あるときは、後から作られたものが前の内容を撤回したものとみなされるためです。
ただし、新しい方の遺言書に不備があったり、法的な要件を満たしていない場合は、その遺言自体が無効になるおそれもあるため注意が必要です。
また、内容によってはどちらの遺言にも有効な部分があるケースもあり、単純に「古いから無効」とは言い切れません。
たとえば、「財産の一部についてだけ、後の遺言で変更されていた」といったこともあり得ます。
このように、複数の遺言書が存在する場合は、一つ一つの内容を丁寧に確認し、有効性や整合性を慎重に判断する必要があります。
不安があるときは、早めに弁護士に相談しましょう。
Q:遺産分割が終わった後に遺言書が出てきたら、やり直しになる?
A.すでに遺産分割が完了した後に遺言書が見つかった場合でも、必ずやり直しになるとは限りません。
対応は、そのときの状況や相続人間の合意内容によって異なります。
- 相続人全員が、遺言書の存在と内容を知ったうえで、すでに行った遺産分割に合意している場合
その遺産分割は有効とされ、やり直す必要はありません。
- 一部の相続人が遺言書の存在や内容を知らなかった場合
合意の効力が否定され、やり直しが求められるケースもあります。
- 遺言の内容が当初の分割内容と大きく異なっていた場合や、誰かが「遺言通りに分けたい」と主張している場合
話し合いがまとまらず、調停や訴訟に発展することもあります。
早い段階で弁護士に意見を求めることで、より適切な判断につながります。
遺言書に関するお悩みは、半田みなと法律事務所へご相談ください

遺言書を見つけたときは、「開けても良いのだろうか」「正しく手続きできているのだろうか」と迷いながら進める方が多いものです。
「開ける」「信じる」「手続きに進む」という3つの段階ごとに、法律的に正しい対応を取ることが、家族間のトラブルを防ぐためにとても重要です。
半田みなと法律事務所では、相続に関する初回相談(60分)を無料で承っています。
遺言書の確認や相続手続きの進め方に不安がある場合は、ご相談ください。
また、税理士・司法書士など地域の信頼できる専門家とも連携しており、法律以外の手続きについてもワンストップで対応可能です。
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